教職員が学生を援助するために

教職員が学生を援助するために

学生が悩みや問題を訴えてきたとき、あるいは、教職員から見て学生の様子が気になるとき、あなたは教職員としての立場からその学生に何らかの可能な援助を提供したいと思うことでしょう。以下、学生の相談を受けるときに役立つと思われる一般的なアドバイスを述べてみます。

学生の相談を受けるときの基本的なポイント

相談を受けるに当たって、以下の2つのポイントを基本的に大事なこととして銘記しておいて欲しいと思います。
 1つは、相談において、あなたが学生の福祉を純粋に案じていることが学生に伝わるよう気を配るということです。あなたがその学生を案じていることが伝わらないようなやり方で与えられてしまうと、いくら内容的には合理的な助言も、まったく奏功しないことがしばしばです。
 もう1つは、あなた1人では最も有効な援助が与えられない場合がしばしばあるということです。プライバシーに配慮しながらも、適切な人を巻き込んでいくことによって、学生をよりよく援助できるということをよく考慮してください。

相談を受ける際の具体的な注意点

<相談を受ける場所を確保する>

プライバシーが守られる、静かで快適な空間を設定しましょう。他の誰かに見られたり聞かれたりしないということが悩みを抱えた学生を安心させます。

<話を聴く>

助言したり、考えの間違いを指摘したり、お説教をしたり、反論したりせずに、まずはただ学生の話を聴きましょう。学生の悩んでいることを、学生の視点に立って、ただ感じ取ることに努めます。アタマで理解するよりも、むしろ、感情や気持ちのありようを肌で感じ取るように聞きます。時々、自分が得た理解を伝え、そのような理解で合っているか確認します。基本的には相手に手綱を委ねて自由に話すことを促しますが、不明瞭な点はオープンな質問で明確化していきます。あなたが学生に「自分の悩みをよく理解してもらった」と感じさせることができればできるほど、その学生があなたの意見や助言を受け入れる可能性が高まります。

<悩みをダウンサイズしない>

あなたの目から見ていかに理解しにくい悩みであっても、真剣に話を聴きます。話している学生の主観的体験に注目して、その苦痛を受けとめます。頭ごなしに「そんなことは気にする必要はない」「大丈夫だ」「深刻に悩むようなことじゃない」などと、悩みの妥当性を否定するようなことは言わないことです。

<心配する理由を具体的に明瞭にする>

あなたが学生を心配する理由を述べるときは、できるだけ具体的に最近の観察を伝えるようにします。「おかしい」「変だ」といった言い方はせず、「やせてきた」「欠席が多い」「研究上のミスが多い」などといった具体的で観察可能な事実を示します。

<選択肢を一緒に考える>

学生と一緒にブレーンストーミングをして可能な選択肢を考えましょう。援助が得られそうな多様なリソースを挙げます。友人、家族、先輩、後輩、TA、RA、学生部、カウンセリングルーム、キャリアサポートルーム、障害学生支援ルーム、健康科学センター、留学生センター、などなど。生きる意味や人生の課題などの大問題を扱うよりも、目先の具体的な課題を扱った方が建設的なことが多いようです。「とりあえず今日は帰ってゆっくり休んでは」といったことでもいいのです。

<助言やコメントは最後に短く、落ち着いた態度と温かな声で>

助言やコメントの効果は、それを与える前にじゅうぶんに学生の話を聴き、学生から「よく分かってもらった」と感じられているかどうか、ということに非常に大きく左右されます。分かってもらっていない相手から与えられた助言やコメントは、どんなに内容が妥当でもほとんど考慮されないことが多いのです。また、くどくどとしつこく述べたり、今この場で直ちに考えを変えさせようと強引な説得をしたりすることも、逆効果であることが多いです。往々にしてこうしたやり方は、援助者の側が不安になってあせっていることの表れです。助言やコメントはじゅうぶんに話を聞いた後、短めに与えましょう。助言やコメントに関して大事なのは、それを与えるときの態度や声です。落ち着いた態度で、温かい声で、伝えてください。

<一人で抱え込まない>

学生を助けるためにはどうしたらいいのか、分からないときもあるでしょう。学生を助けたいと思っても、学生があなたの援助に応じないこともあるでしょう。そういうときは、学生のプライバシーに配慮ししつつ、適切な誰かに相談しましょう。同僚に、上司に、部下に、カウンセリングルームに、健康科学センターになどなど。個人の援助には限界があります。あなたが他者に相談したり他者の援助を求めるとき、それは事実上、適切な他者を関与させるようにすることによって学生を援助しているのだということを理解しておくことが重要です。逃げだとか、敗北だとか考えないように。

<自分自身を大切に>

学生に援助を与えることは不死身のヒーローになることではありません。学生を助けようとする中で、過剰な責任を引き受けたり、無理をしたりして、ストレスを感じるようになることがあるかもしれません。援助者が自分を犠牲にしてしまい、自らの心身の健康を害してしまうという問題は「燃え尽き症候群」と呼ばれる重要な問題です。自分自身の欲求に注意することです。援助することが、あなたの健康を損ねたり、いつもどおりに生活を楽しむことを妨げたりしていないか、注意してください。

カウンセリング・ルームへの紹介

紹介する前に、じゅうぶんに話を聴き、学生の悩みを理解することが大切です。あなたに対する学生の信頼が、紹介先のカウンセラーに対する学生の信頼の基礎となるのです。

 紹介することが、厄介者をよそへ追い払うことと体験されないように配慮しましょう。カウンセリングを受けた後、どんなだったかを簡単にでも知らせてくれるよう学生に告げることで、あなたがカウンセラーに任せっぱなしにしようとしているわけではないということを伝えましょう。

 しばしば学生はカウンセリングを受けることを挫折や敗北といった弱さの表れと見なします。そしてそれがカウンセリングを受けることへの障壁の1つになっています。自分一人で何とかしようと抱え込まずにカウンセリングを受けることは、賢明さと強さの表れであるということを伝えてあげましょう。

 大学が提供している専門的サービスを「利用する」のだという、能動的な意識を学生に養いましょう。

 カウンセリングは自己探求、自己決定、自己成長を目指してクライエントとカウンセラーとで取り組む共同作業であり、単にカウンセラーに依存することではないことを理解してもらうことも大切です。カウンセリングを受けることは、手術を受けるようなこととはまったく違い、きわめて能動的な参加を求められることなのだということを教えてあげてください。

 すぐにカウンセラーにつなぐ必要があると判断されたなら、その場で電話して予約時間を決めるか、カウンセリングルームまで付き添うことが有用です。ただし強引になりすぎないように注意してください。結局のところ、本当に今カウンセリングを受けることが有用なのかは、誰にとってもさほど自明なことではないのです。カウンセリングに対して否定的な学生の考えは必ずしも常に不合理なものとは限らないということを考慮してください。また、学生の積極的な意志が欠如したままに強引に連れてこられても、カウンセリングはうまくいきにくい、ということも知っておいてください。

 カウンセリングルームについて、次のような基本情報を知っておくと、紹介するときに説得力が増すことでしょう。
 カウンセリングルームには年間500人以上の来談者があり、のべ5000回以上の面談が行われているということ。相談内容は、学業・研究を阻害している悩みのみならず、家族のこと、恋愛のこと、病気のこと、不安やうつ、ハラスメントなど、多種多様であること。相談は基本的に予約制であること。料金はかからないこと。

カウンセリングルームにおける秘密の保持について

相談内容は、相談に来たという事実も含めて、原則的にカウンセリングルームの外部に公表されることはありません。ただし以下の場合は例外です。

  • 本人が第三者からの照会に答えることを許可ないし希望したとき。
  • 深刻な自傷他害の危険性があると判断されたときなど、秘密を保持し続ける方が本人の福祉に反すると判断されたとき。(ただしこの場合でも、可能な限り本人の了解を取る努力を払い、また、公表される情報とその相手先の範囲を必要最小限にとどめる努力を払います)。

学生が援助を必要としているサイン

以下に学生が援助を必要としているサインとしてしばしば認められるものを挙げておきます。ただし、1つか2つのサインがあるからといって、直ちにそれが援助が必要とされる状態であるということを意味するわけではありません。いくつものサインが重なって見られる場合、その学生が援助を求めている可能性が高いということだと考えてください。

<学業上のサイン>
  • ・成績の低下
  • ・課題遂行上の質の低下
  • ・期限を守れない、ミーティングへの遅刻、すっぽかし
  • ・授業やゼミへの欠席が目立つ
  • ・教室や研究室での不適切な言動
<生理学的・身体的サイン>
  • ・身だしなみの低下
  • ・急激な体重の増加、減少
  • ・疲れた様子
  • ・睡眠の問題
  • ・心身症 頭痛、吐き気、胃腸障害など
<心理学的・行動的サイン>
  • ・集中力の低下、モチベーションの低下
  • ・悲嘆、不安、敵意などの強い情動
  • ・うつ、無気力、絶望感
  • ・落ち着きのなさや多弁
  • ・攻撃的行動
  • ・孤立
  • ・自殺を示唆する言動
<背景的要因>

以上のサインに加えて、以下のような背景的要因がある場合には、これらのサインの重みは重くなります。

  • ・以前にもこころの問題で援助を求めたことがある
  • ・親の別居や離婚、家族の病気や死などを経験している
  • ・最近、重要な喪失があった
  • ・最近、自尊心への深刻な打撃があった
  • ・友人や知人がその学生についての懸念を伝えてきた